東海岸・海碉堡カフェ、穎!咖啡(イン・コーヒー)の移転物語
【花東旅食パスポート・人物記】
穎!咖啡——別れの前に、一日一日を丁寧に淹れ終える
世の中には、
流行を追いかけるための店ではなく、
日々の暮らしに寄り添うためのカフェがあります。
穎!咖啡は、まさにそんな存在です。

一、好きなことを、日常の風景の中に置くこと
2021年の春、
穎!咖啡は台湾セメント(台泥)所有地の一角で産声を上げました。
そこは観光スポットとして用意された場所ではありませんでしたが、
日々の営みを積み重ねるには十分な場所でした。
オーナーにとって、
これは初めての起業でした。
完璧な設計図があったわけではありません。
ただ一つ、はっきりとしていたのは、
「自分が心から好きなことをする」という方向性だけでした。
毎日豆を挽き、淹れ、客を迎える。
その繰り返される所作の中で、
一杯のコーヒーがいかにして誰かの生活の一部になるのかを、
少しずつ学んでいきました。

二、旧店舗の姿:控えめでありながら、人を惹きつける場所
旧店舗の店先には、カレーの香りと生活の音が漂っていました。
空間は「映え」を意識して設計されたものではありませんでしたが、
自然と「長く座っていられる」心地よさが生まれていました。
訪れた人々は、よくこう言いました。
「一目で驚かされるような店ではないけれど、
飲み終えた後、ふと思い出してしまう店だ」と。
ある常連客はこう表現します。
「ここのコーヒーからは、技術を誇示するためではなく、
オーナー自身が毎日飲みたいと思っている味がする」と。
その評価は、まさに穎!咖啡の性格そのものでした。
静かで、堅実で、急がない。

三、余儀なき別れ:ある暮らしの、一時的な停泊
2024年、
土地の再開発計画に伴い、
台泥の所有地が返還されることになりました。
穎!咖啡もまた、避けては通れない転機を迎えます。
派手なフィナーレはありませんでした。
ただ、穏やかなお別れの言葉が綴られただけです。
「3年間の歩みに、感謝を込めて」
「物語を携えて店を訪れてくれた皆さま、ありがとう」
修飾語のないその言葉は、多くの常連客の心に響きました。
それは一軒の店が閉まるということではなく、
共に過ごした暮らしの断片が、
ひとまず大切に仕舞われるということなのだと。

四、再出発:海碉堡の前で、景色は変わった
旧所在地を離れた後、
穎!咖啡は過去をそのまま複製しようとはしませんでした。
新しい空間は、海碉堡(ハイデョウバオ)の近く。
視界はより開け、
より自然の近くへと移りました。
ここでは、
街の喧騒に代わって潮風が吹き抜け、
時間の流れがより鮮明に感じられます。
けれど、椅子に座りコーヒーを一口飲めば、
常連客はすぐに気づくはずです。
あのリズムは、少しも変わっていないことに。
新店舗を訪れたある人は、こう書き残しました。
「空間は変わっても、
このコーヒーは変わらず安心させてくれる」


五、変わらぬ核心:コーヒーを「日常」として淹れ続けること
旧店舗から新しい空間へ。
穎!咖啡は一貫して流行を追いかけることはしませんでした。
クリーンでバランスが良く、飲み飽きないコーヒーの風味は、
言葉による説明を必要としません。
その選択は、
長い時間の专注と内省から導き出されたものです。
覚えられようとするためではなく、
毎日を繰り返したいと思えるように。
六、花東旅食パスポートの視点:記憶に残る場所
花蓮や台東において、
真に記憶に刻まれる店とは、
往々にして最も賑やかな店ではなく、
人生のある一時期を共に歩んだ場所です。
穎!咖啡は、
まさにそのような店です。
遠くへ行こうと急ぐのではなく、
ただ目の前の一日を丁寧に過ごすこと。
2021.04 – 2024.04
これは終止符ではなく、
宝物のように大切にされるべき時間です。
風景は変わり、
空間は移動しても、
真心を込めて淹れられたあのコーヒーは、
ずっとそこにあり続けます。
移転前
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移転時
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海碉堡
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